フードコートで食事せず、冷水機で「水筒を満タン」にして帰る客…法的な問題は?

都内の大学に通うKさん(20)は、「自販機で飲み物を買うのはもったい無い」と考え、いつも水筒を持ち歩いている。大学や商業施設などで冷水機を見つけると、水筒を満タンにするのが習慣だ。しかし、最近そんな自分の習慣に問題はないのか、心配になってきたという。


Kさんは、とくに買い物や食事などで利用していなくても、大学の食堂や商業施設のフードコートなどで冷水機を見つけると水筒を補充してきた。これまでは「冷水機の水は誰が飲んでもいいはずだから、水筒に入れて持ち帰っても問題ないだろう」と考えていた。しかし、不安な気持ちがだんだん強くなってきたそうだ。


誰でも出入りが可能なフードコートなどの施設に置かれた冷水機から水を持ち帰る行為は、法的に問題ないのか。半田望弁護士に聞いた。


●「厳密に言えば窃盗罪になる可能性」


「まず、これらの設備は原則として食堂やフードコートを利用して食事をするお客さんに対するサービスであることは間違いありません。


もっとも、施設の特性上、食事をしないお客さんも休憩場所や談話場所として利用することは一定程度予想されています。


これらのお客さんも店舗にとっては潜在的な顧客である以上、食事をしないお客さんの冷水機等の使用を全面的に禁止する、という施設はほとんどないと思われます」


半田弁護士はこのように指摘する。では、施設で飲むだけではなく、持参した容器に入れて水やお茶を持ち帰ることはどう考えればいいのか。


「冷水機はあくまで施設を利用するお客さんへのサービスですので、施設を利用しない持ち帰りの使用まで店舗が認めているとは考えにくいところです。


そうすると、問題の行為は無許可で水を持ち帰る行為であり、厳密に言えば窃盗罪になる可能性があります。わかりやすく言えば、『他人の家の水道から水をくむ』ことと同じです。


また、頻繁・大量の持ち帰りなど、本来のお客さんの利用の妨げになるような態様で持ち帰っている場合には、業務妨害行為として民事上の賠償責任が生じる可能性もあります。


とはいえ、多くの施設であれば、学生が小さめの水筒やペットボトルに水を汲む程度は大目に見ているだろうと思います。


法律上も、汲んだ水が少量であれば『可罰的違法性がない』として、あえて罪に問うたり賠償の問題を生じさせることまではないと思われます」


●「持ち帰り禁止」張り紙がある場合は?


では、『持ち帰り禁止』という張り紙をしてあったり、店員から注意を受けたりした場合、結論は変わるのか。


「そのような場合には、違法性も認められやすくなると思われますし、『いけないこととは知らなかった』という弁解も立たなくなります、。


なお、禁止されていることをわかっていたり、注意を受けたにもかかわらず何度も繰り返していたりする場合には、より悪質性が高いとして違法とされやすくなると考えます。


実際に、店員から注意されたにもかかわらず、スーパーの氷を大量に持ち帰ろうとして窃盗罪に問われた事例もあるようです。


Kさんは買い物や飲食をせず冷水機のみ利用することもあるそうだが、買い物や飲食をすれば、自由に使っていいということになるのだろうか。


「いえ。持ち帰りの分まで水を汲むことは、たとえ店舗を利用していたとしても、店舗の承諾範囲を超えると考えられますので、同様の問題は生じます。


被害が小さいので店側も目くじらを立てていないだけですが、同じようなことをする人が何十人、何百人と出てきた場合、店側の迷惑は計り知れないと思います。


『自分だけは大丈夫』ではなく、店側に迷惑をかけているということは自覚したほうがいいでしょう。


学生時代のエピソードとして振り返れば微笑ましい話になるかもしれませんが、トラブルを避けるためには節約するにしてもお茶くらいは家で沸かして持って行く方がいいですね」


(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。交通事故や消費者被害などの民事事件のほか、刑事弁護にも取り組む。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、接見交通の問題に力を入れている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp/