TVアニメ『恋愛暴君』監督&Pが作品に惹きつけられた魅力とは

TVアニメ『恋愛暴君』監督&Pが作品に惹きつけられた魅力とは 4月よりテレビ東京ほかにて放送中のTVアニメ『恋愛暴君』関連で、これまで声優陣のインタビューをお届けしてきた連載企画。今回は視点を変えて、本作の監督である濁川 敦さんとEMTスクエアードのプロデューサー・宮本秀晃さんによる対談を前後編に渡って実施! 【前編】では、原作の魅力や漫画からアニメ化にするにあたってのこだわりについて語っていただきました。

 

時折見える少女漫画テイスト的な要素を独特のテンポ感の中で表現


http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1495198551 (【TVアニメ『恋愛暴君』監督&Pが作品に惹きつけられた魅力とは】の写真付き記事はこちら)


――『恋愛暴君』をアニメ化するにあたって、スタッフ陣、特に監督などはどのように決まっていったのですか?



プロデューサー・宮本秀晃さん(以下、宮本):テンポが良い作品で、しかもギャグものである。それを考えると、ある意味でベテランでないといけないなと思ったんです。この作品、結構難しいと思っていて、テンポをギュッと縮めていこうと思ったので、それができるのは誰だろうと考えたときに、演出経験が豊富な方がいいなと。さらにスタッフ陣が強烈だったので、それをまとめていただける方ということで濁川さんにお願いしました。



――他のスタッフ陣は最初に決まっていたんですね。



宮本:だいたいこんな感じかなって目処はついていたので、その方々に声をかけつつ。この作品って段取りじゃないと思うんですよ。前後のカットがこうだからとか言ってたら面白くないから、スパン!スパン!スパン!ってギャグをやるっていうのが分かる方というのが第一条件でしたね。



――監督は、この話をいただいたときは?



監督・濁川 敦さん(以下、濁川):そのときはまだこの作品のことは知らなかったんですけど、1冊読ませていただこうと思い、とりあえずKindleで1冊買って読んでみたんです。そしたら自分的にえらく面白くて、2巻くらいまで読んだあたりで電話して「やります」と引き受けさせていただきました。



――面白いっていうのは、どういうところに感じましたか? やはりアニメで動いている画が見えたとか。



濁川:読んでいるときは、どう映像化しようとかは考えていなくて、単純に読者のつもりで読んで、すっげー面白いなと思ったんです。で、「やります」と言ったあとに全巻買って一気に読んじゃったんですけど、そのときに感じたのは時折見える少女漫画テイストみたいなところで。それをこのテンポ感の中で出せたらいいなぁみたいなことは考えました。

――今、少し出てきたのですが、原作の魅力についてお話いただければ。



宮本:やっぱりストーリーがちゃんとあるんですよね、キャラクターが成長していくのはもちろん、ギャグが懐かしいというか。今、日常芝居のアニメって多いと思うんですけど、その中にギャグがうまい具合に散りばめられていて、いい原作だなって思いました。



同じクールでこういうアニメが他に放送されるよっていう情報はだいたい入ってくるんですけど、その中でもちょっと異色な作品にできるだろうなって。少なくとも埋もれる作品にはならないだろうと、読んだときに思いました。昔はこういうアニメあったけど、今はあまりないよねっていうところで、魅力があるなと思います。



――ギャグも昭和感があるんですよね。



宮本:そこがいいところだと思います。肩肘張らずに見れる。深夜に見て、あ~スッキリしたで終われる感じかなって。ひと言で言うと“楽しい”ってことなのかなと。



――濁川さんは原作の魅力についていかがでしたか?



濁川:宮本さんが言っていたことと被るかもしれないんですけど、自分が学生の頃に読んでいた漫画の面白さが詰まってて、そういうところが面白いと思いました。その中で、さっき言った少女漫画感。そこらへんが自分はすごく魅力だと思っていて、そこをメリハリという形で出せていけたらと思うんですけど……。今、アフレコ自体(取材時点で)は9話くらいまで終わっているんですけど、徐々にそういうテイストも出していけたらなと思ってます。





第1話のテンポ感は実際に放送されるまで心配だった!?

――単なるハーレムものではないんですよね。茜がヤキモチを妬いてみたり、女性の心理描写が実はリアルというか。



濁川:これまでも、いろいろハーレムものってありましたけど、その中に女の子から見た目線みたいなものがプラスアルファで加えることができたら、今までのいわゆるハーレムものとは違った視点が入れられるんじゃないかなと思いました。



――原作の方が女性というところもあるんですかね?



宮本:でも、そのわりにはエロいんですよね(笑)。アニメでも、前半に結構そういうエロいところは出てくるけど。そこは原作のエロさは活かしていいんじゃないかって話をしました。



濁川:でも原作の先生が女性というのは、本当に知らなかったんです。少女漫画っぽい要素があると思いつつも。なのでお会いしたときに、あぁって納得しました。



――エロもあり、少女漫画っぽさもあり、ギャグもあり、バトルもある。



宮本:てんこ盛りですよね(笑)。1話の中でも前半と後半で全然違う話になるし。



濁川:特に1話なんて本当に詰め込んでる感じがあって、それがいいテンポになってて、うまくいったなと。

――シリーズ構成的な話だと思うんですけど、とは言え1話の凝縮っぷりはすごいですよね。これはいろいろ話し合ってそういう結論に達したのですか?



宮本:そう言ったらカッコいいんですけど、原作のここまで行きたいっていうのが最初にあって、そこまでをどうやろうとなったときに、どうするかが二通りあって。ストーリーで重要な線以外のところを外していくのが今の王道だと思うんだけど、今回は、もういいからガシャっとやっちゃおうと(笑)。ガッと詰めたら何とかなるんじゃんって。これは結果論ではあるんですけど、今までと違うテンポのアニメにはできたかなって。映画の『シン・ゴジラ』が結構早口だったじゃないですか、あれを見たときに、こういうのもありなんだって。それで何とかなると思ったのは覚えてます(笑)。



濁川:自分は、最初に読んだときの印象を映像化する目標でやってたので、テンポ感みたいなものは、ある程度狙ってやっていたんですけど、やっぱり放映されるまでは不安もあったんです。でも放映を見て、皆さんの評判も聞かせてもらって、方向性としては間違えてなかったんだなと確信できました。



宮本:そういう意味では、声優の方々には感謝ですよね。



濁川:そうですね。アフレコも難しいと思うんですよ。いろいろ食い気味に来たりするので。



宮本:本当によく勉強してきていただいて、あのテンポ感はこの役者の方々なくしてはできなかったと、本当に思ってます。



――スタッフ陣についても聞きたいのですが、キャラクターデザインについて、何か要望を出したことなどはありますか?



宮本:キャラは僕が声をかけたんですけど、お願いしたことはとにかく原作の可愛さを活かしてくれということだけでした。なのでどうするか迷ったのは、ハイライトを入れるか入れないかっていうところくらい。あとキャラに関係することで言うと、線の色をどうしようかってところで。これはいろいろな意見をいただいて、結果ちょっと変わった線の色にしたんですけど、それは上手くいったと思ってます。冒険ではあったんですけど、アイディアを出していただいた方に感謝です。



――黒ではないですよね。その効果って?



宮本:いろんな色がOKになるんですよ。黒だと先に線がドンと来るので応用は利かないんですけど、今回は自由に色で遊べるんです。線がグレーだと見た目も柔らかくなるし、そのあと遊べる幅も広がったと思います。撮影さんも勝手に色を変えてきて遊んでますから。



――勝手に変わっちゃって大丈夫なんですか?



濁川:最初に撮影さんとは打ち合わせするんですけど、自分のイメージは伝えてあって、撮影監督さんもみんなのことをよく理解してくれてて、そんなに揉めることもなく、うまいことやってもらっています。





原作にもあるパロディ部分は可能な限り拾うスタンスで

――演出というか、内容についてなのですが、パロディがすごく多いですよね?



濁川:そうですね(笑)、そのへんは怒られないギリギリのところをいけたらなと思ってるんですけど。可能な限り、原作にあることはやっていきたいなと。



宮本:作る側としては、ギリギリな線をいかないといけないところはありますね。



――パロディ的なところは、監督としては得意分野?



濁川:得意というか好きですよね(笑)。漫画を読んでても面白かったですし、それと他のハーレム作品との違いで言うと、時折あるBLネタですよね、これも特徴なのかなって。それがちゃんとギャグとして笑える感じになっているのもいいなって。



――原作と変えているところは?



濁川:言い回しで、どうしても入り切らない部分は削らなければいけなかったりするんですけど、それによってお話的に辻褄が合わなくなるという部分は、整合性を取らせてもらったりはしてます。でもそれ以外は、原作を大事にしていきたいなというスタンスではあります。



――あと、これもちょっと話しづらいかもしれないですが、BGMもパロディですよね?



濁川:面白かったですね。



宮本:今のところ何も言われてないから大丈夫なのかと……。



――茜さんのテーマみたいなのは面白いですよね。茜さんで言うと、最初の頃走ってくるときの乳の揺れの音がボンボンみたいな。



濁川:あそこは面白かったですよね(笑)。あれは音響さんが入れてきて。自分は最初、想定してなかったんですけど、思いっきり音が入ってて、これもありかなと。

――現場のノリ的な?



宮本:やっちゃったもん勝ちじゃないですかね(笑)。おかしかったら誰か止めるでしょう。



――監督はわりと止めないタイプ?



濁川:むしろ笑ってました。



――あと、ギャグの間も絶妙だなって思うんですけど、その感覚はどのように?



濁川:編集のときに、ある程度自分の思うような間にするんですけど、この作品の場合は、グリの青山吉能さんがいろいろアドリブを入れてきて、それがいちいち面白かったりするんです。なのでそっちのほうが面白い場合は、口のほうを合わせて作るみたいなことはやったりしてます。キャストさんの、今のずれてたけど面白かったよねみたいなのって、だいたいそっちを使ったほうが面白いので。





監督が手掛けたOP&EDの映像、こだわりのポイントとは

――最後にOPとEDについてですが、この演出も監督がされているということで、そのこだわりを教えてください。



濁川:OPもEDも曲がすごく好きで。OPの作業をしているときはひたすらOPを聴いてるんですけど、OPはテンポよく、EDは対極で癒し系だったので、その差というか、静と動じゃないけど、メリハリを出していけたらなと思いました。OPはガチャガチャ動いてて、EDは落ち着いていくみたいな。



――OPのガチャガチャ感とか、ゲームっぽい画のアイディアは、ずっと聴いているうちに?



濁川:ひたすら何をするにも聴いていて…。最初に思い浮かんだのは何の画だったかなぁ。とにかく青司がグリとか茜とかの愛の重さに追いかけられてドタバタしてるみたいなニュアンスを出したいなと思って。ハート爆弾に爆撃されてみたいなアイディアが漠然とあった感じですね。あと、そこの作画をしてくれた方も、そういうのが得意な方だったので、上手くハマりました。



――ちょっと懐かしさを感じたんですよね。『うる星やつら』とか、あの時代の感じ。



濁川:あ~、そうですね。目指したわけではないですけど、あの時代のガチャガチャ感みたいなのが出てたとしたら、『恋愛暴君』のニュアンスに合っているのかなと思います。



――宮本さんのほうからは、特に要望を出したりはしないのですか?



宮本:もう、監督のおっしゃった通りで、僕のほうはそれを描けそうな人はあの人かなぁと思ってお願いしたら、いいのが上がってきましたよね。



濁川:そうですね。



宮本:描けねぇ描けねぇって言いながら、楽しそうに描いてました。



【後編に続く】





[インタビュー・文/塚越淳一]


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