抗争劇は最終局面へ…六代目山口組から見た“造反2組織”の内部事情

抗争劇は最終局面へ…六代目山口組から見た“造反2組織”の内部事情


 キーマンの社会不在に、ヤクザ社会が揺れている。傷害罪、暴力行為法違反の容疑で京都府警に再逮捕された井上邦雄組長である。



「発端は兵庫県警による逮捕で、知人名義の携帯の虚偽契約が入口でした。井上組長はこの携帯電話を使って京都で起きた乱闘事件を指揮した疑いがもたれており、通話記録が残っている。井上組長に加勢を依頼したのは会津小鉄会の馬場美次・元会長ですが、すでに京都府警の聴取に応じているようです。このまま起訴されれば、井上組長は実刑判決を免れないのではないか」(捜査関係者)



 井上組長の逮捕と前後して、六代目山口組による殺人事件も勃発した。神戸山口組に移籍した愛媛の木村會の幹部を、岡山に本拠地を置く六代目山口組系・大石組の幹部が刺殺したのだ。



 緊迫感が増す現状について、取材を続ける実話誌記者が語る。



「4月末に神戸山口組を割り、新たに任侠山口組を結成した織田絆誠代表ですが、彼が力を入れていた地域がことごとく火薬庫となっている印象があります。今回の刺殺事件で加害者となった岡山は、池田組の高木昇若頭が射殺された地域でもあります。分裂直後に全国各地を織田代表が練り歩いた際、双方で数十人の組員が衝突した仙台ではその後、織田一派の幹部が刃物で襲われ、山健組を離脱した。富山でも織田代表による示威行為は活発に行われましたが、県内の山健組勢だった本江組はその後切り崩しにあい、組を畳んだと聞きました。当初は劣勢と伝えられていた六代目山口組ですが、ここへ来て地肩の強さを見せつけている感があります。



 興味深いのは、山健組も任侠団体山口組も、傘下組織の離脱や解散を認めない点です。解散届を出したと聞いた組員について聞くと、どちらも『ウチに籍がある』と答えます。見かけの数だけでも減らしたくないのでしょうが、記事を作るうえで難儀しています」(実話誌記者)



 15年8月に分裂した直後から、織田代表の存在感やメディア工作もあって“神戸優勢”の観測がしばらく続いてきた。その状況が今、瓦解しているのだろうか。そうであるならば、トップ不在という非常事態をこれから迎えかねない神戸山口組は、この先どうなるのか。



 神戸、任侠団体山口組という2つの“造反組織”について、六代目山口組二次団体幹部・X氏はこう語るのだ。



「メッキが剥がれたということ。これに尽きる。任侠はほどなく自滅し、神戸は中田(広志・山健組若頭)が山健組の跡目をとったら一連の分裂劇は収束するでしょう。我々はジワジワと攻めていくだけ。結局、消耗戦の果てには“山口組は1つ”という本筋に帰るだけです」



◆ヤクザという伝統文化を破壊する男



 敵の敵は味方――という論法で、六代目山口組と任侠団体山口組の再接近を指摘する観測も見られる。だが、前出のX氏は「神戸も任侠も、現時点ではどちらも同じ敵でしかない」と一刀両断する。



「六代目山口組から言わせれば、神戸も任侠もケジメをつけない限りは、造反者の集まりでしかありません。ただし、その中でも織田というのはね、ちょっと違う。織田をして“原理原則主義者”と評するジャーナリストがいたが、あれのどこがヤクザの原理原則を守っているのか? 聞きたいね。親の悪口は言う。都合のいいことばかり言って、雲行きが怪しくなると責任はとらない。気にするのは、外からの見え方ばかりじゃないですか。



 滋賀の件、奥州同志会の件、本江組の件、九州で加入した兄弟の件。内情を知ってる人なら、とっくにわかっている話ですが、織田がやっているのは、実態のない組織を作ってアピールすることだけ。この先、掲げるビジョンは民間の軍事会社ですか? 織田は日本語しかしゃべれないし、パスポート持っている人間が何人いるのか(苦笑)。そんなこと、堅気になってやればいいじゃないか。これでは、信じてついて行った下の者が可哀そうです。織田が長期服役で不在時、バイトで食いつないで帰りを待っていた骨のある側近もいるそうですから。任侠団体山口組の構成員と話す機会もありますが、当然のことながらグラグラしてますよ。



 織田は井上(邦雄・神戸山口組組長)を批判するにあたって『進言・諫言を聞かない』と言っています。これは、自身が今、まさにそうなのではないか。下の人間のために、と言うのなら、織田は腹を括り、ケジメをつけて、下の者のことを本気で考えてやったらどうなんだと言いたい」



 憤るX氏は、織田代表よりも若い世代にあたる。その胸中には、筋や盃といったヤクザの伝統文化をないがしろにする行為への怒りが滲む。



「江戸時代に遡ると、ヤクザというのは寺に捨てられた子を親分が拾って姐さんと育てて一人前にし、刺青を入れて街の火消しとして活躍する居場所を作った。中には十手を預かり、治安維持に一役買った者もいます。“必要悪”などと言うつもりはないが、生まれながらに道を外れた者、社会に適応できずはみ出した者のセーフティーネットとして、機能してきた面はあると思います。そして、その源はなにかと言われれば、血よりも濃い盃です。こうした大原則とも言えるルールを守れない人間が、何を守れるというのか。国を、大切な若い者を守れるのか。これ以上、山口組の名を汚してほしくない」



 3つに割れた山口組の分裂抗争は、X氏が言うように最終局面に入り、今こそ原理原則(プリンシプル)へと回帰していくのか、それとも――。



取材・文/日刊SPA!取材班