西田敏行、テレビ東京の"コンテンツ"ではないドラマに新鮮な思い 『琥珀』撮影で感じたものづくりの良さ

西田敏行、テレビ東京の"コンテンツ"ではないドラマに新鮮な思い 『琥珀』撮影で感じたものづくりの良さ

●『バイプレイヤーズ』『サイタマノラッパー』にも注目

多くの作品に出演し、確かな印象を残す俳優・西田敏行。日本アカデミー賞では司会を務め、作品に対する知識や俳優への愛情をにじませる。古希を迎え、9月15日に放送されるテレビ東京系スペシャルドラマ『琥珀』(21:00~23:08)は、浅田次郎の原作の実写化として過去に放送された『角筈にて』(1999年)、『天国までの百マイル』(2001年)、『ラブ・レター』(2003年)、『シューシャインボーイ』(2010年)に続く、5作目となる。



現在、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』も好評な岡田惠和が脚本を務め、寺尾聰、鈴木京香、工藤阿須加、川島海荷といった実力派俳優がそろった"大人のドラマ"で、西田は定年間近の刑事を演じた。心の機微が繊細に描かれた同作は、"久しぶり"な感覚で演じることができたという。



○寺尾聰に嫉妬のような気持ち



――今回、7年ぶりの浅田次郎さん原作のドラマ化ということで、振り返っていかがでしたか?



テレビ東京でドラマをやらせていただくきっかけになったのは、浅田次郎さんの作品が最初でした。『角筈にて』という短編から始まり、今回で5作目となりますが、どうしてもお金や視聴率に拘泥しすぎて、作品を作るという感覚よりは、"コンテンツ"という捉え方をされているドラマ作りの現状の中で、リスクを省みずにこういった企画でドラマを作っていくという姿勢が大変うれしくて、参加させていただいています。



寺尾聰さんとは、彼が「ルビーの指環」を大ヒットさせたのと同じ年に、私が『もしもピアノが弾けたなら』を出しまして、私もヒットとは言われましたが、寺尾さんは巨大なヒット。ずっとなんとなく羨ましいというか、嫉妬のようなものを抱いておりましたので、今回共演という形、しかも私が捕まえる方ということでちょっと溜飲を下げた気持ちです(笑)。



意外と寺尾さんとは初共演で。黒澤明さんの秘蔵っ子として、とても丁寧に作品に挑んでる印象がありましたし、私は声がかかれば断ることなくいろんなことをやっていましたので、俳優としての生き方にも、一つ向こうの方が上回ってるなっていう感じがしており、一緒にやれてよかったなと思っています(笑)。



――西田さんは4月にテレビ東京さんの入社式に参加された際も、テレビ東京のドラマがいいとおっしゃってましたが、どういうところに良さがあると思いますか?



やはり、ある種既成概念にとらわれない、実験的な番組をいっぱい作ってるなと感じました。深夜枠なんて、山田くんの『(山田孝之の)カンヌ映画祭』だとか、『バイプレイヤーズ』とか、ドラマともバラエティともつかない不思議な感覚のものづくりで、テレビの別の側面で新たな可能性を一生懸命探っている感じが前向きでいいなあと思っています。



――深夜ドラマも観られているんですね。



観ますね。深夜ドラマの方が面白いものがいっぱいあって、既成の枠が外されている分だけ自由に作っている感じがするので、とてもいいですね。『サイタマノラッパー』なんて面白かったですよ。



――"リスクを省みずに"という印象を持たれたのはどうしてですか?



こんなじい様2人のやりとりと、さらに京香さんが間に入ってちょっとした恋模様が展開するような、いわゆる大人のドラマってそうそうないですから(笑)。じゃあこれがすごい視聴率をとるかというと、そんなにはならないだろうということも予測される中での、テレ東の決断、とてもありがたいなと思ってます。



●差別社会に一石投じるドラマをリクエスト

○時代の要請で出てきた岡田惠和



――今回のお話が来た時は、どのような印象でしたか?



2016年2月に怪我をする前にお話があったんですけど、怪我をして延び延びになってしまいまして。ちょっとお待たせてしてしまった部分もあるんですが、1年待っても作りたいんだという情熱を持ち、「ドラマ作ろうぜ!」というベクトルが合う方たちと一緒に仕事できるんだなという喜びを感じました。



脚本の中でも重要な言葉を顕著に感じながらシーンを消化していく感覚があって、こんな作業は、舞台以外久しくやってなかったな、というやり取りができました。新鮮であり、楽しい現場でした。



――岡田惠和さんの脚本についてはいかがでしたか?



彼はやっぱりこの時代の要請とともに出るべくして出てきた、新しく、でもちゃんと古き良き時代も知り得ている、キャパシティの大きなシナリオライターだと思います。また、寺尾さんと岡田さん、高校が同窓みたいですね。「後輩なんだ」と言ってましたから、それもちょっと嫉妬心を煽られました(笑)。



――刑事役として意識されたことは。



ドラマのセリフにもありますけど、ただ漫然と刑事をやっていて、年下の上司からかなりのことを言われるんですね。敏腕の刑事ではないので、いかに普通の感じでいられるか。刑事色もちょっと出さなきゃいけないけど、極力自分の中に普通のオヤジを意識しました。途中で、地でやればいいんじゃないかと思いましたが(笑)。



○抑制の効いた芝居ができた



――今回共演された寺尾さん、鈴木さんについてはどのような印象を持たれましたか?



寺尾さんは本当に実行型ですね。いろんな色がついてる俳優がいる中で、1作1作その時についた色を落とし、生成りみたいな色に戻して、そこからまた新たな作品を始めるんだなと思いました。とっても新鮮だったし、いい感じだなと思いましたね。



京香さんも、現場ごとに全く別人になってるんですよ。以前『釣りバカ日誌』で共演した時も富山でロケだったのですが、海を見つめる京香さんを見ても、見つめ方が全然違っていて、琥珀の幸子として海を見つめているんです。お二人とも、どうやったらリアルに台詞が聞こえるかということに、最も心を砕かれているというような印象を持ちました。



抑制が効いてないと、ちゃんとした大人の青春は描けないと思うんです。どこかで踏み出しちゃうと、単なる犯罪映画や不倫映画になっちゃうので、本当に3人とも抑制の効いた芝居ができたんじゃないかなと思います。



――台詞を現場で覚えるということで有名な西田さんですが、今回の撮影現場でも、アドリブは多用されたんでしょうか?



今回もセリフは割と現場で覚えましたけど、生成り的に役を求めている寺尾さんの前ではかなり失礼なので、アドリブはあんまり(笑)。岡田惠和さんの脚本も、演者に対して気遣いのある台詞の配置がありましたので、心地よく台詞を言えました。岡田さんの台詞というのは、1回さらっと読んでると、何事も起きてないくらい平板に見えるのですが、読み込んだり声を出したりすると「こういうことなのか」とわかり、非常に楽しい演じ方ができるので、なかなかの才能だなと思っています。



――今後、テレビ東京さんに出るなら、どんなドラマをリクエストしたいですか?



そうですね。いろんなことを考えますけど、性同一性障害の息子、というか娘を持ってしまった父親と、その子供のドラマとか、やってみたいなと。共感を得られることができるんじゃないかな。息子が20歳になったら、男同士いっぱい酒を飲みたいなと思っていたら、「ごめんね私女の子なの」と言われた時の親父の思いや狼狽、そういったものがいっぺんにドラマになって、最終的にはお互いの気持ちを乗り越えて理解し合うにいたる、ある意味での差別社会にちょっと一石投じるドラマは、テレ東だったらできそうですよね。



――もう企画書になりそうですね!



ぜひ、中村中さんの歌をフューチャーしてやってみたいですね。
(佐々木なつみ)