ハリルJ、浮き彫りになった「長谷部ロス」。遠藤航を起用も守備組織は一段と機能せず

ハリルJ、浮き彫りになった「長谷部ロス」。遠藤航を起用も守備組織は一段と機能せず

10月10日、キリンチャレンジカップ2017のハイチ戦に臨んだ日本代表。6日のニュージーランド戦から大幅にメンバーを入れ替えて挑んだ一戦は、序盤こそ立て続けにゴールを奪ったものの、3失点を喫するなど苦いゲームになった。特に長谷部誠が不在となったアンカーの位置は代役が見当たらず。今後に向けて不安が募る状況になっている。(取材・文:元川悦子)


繰り返し突かれた「アンカーの脇」

 10月10日、キリンチャレンジカップ2017のハイチ戦に臨んだ日本代表。6日のニュージーランド戦から大幅にメンバーを入れ替えて挑んだ一戦は、序盤こそ立て続けにゴールを奪ったものの、3失点を喫するなど苦いゲームになった。特に長谷部誠が不在となったアンカーの位置は代役が見当たらず。今後に向けて不安が募る状況になっている。(取材・文:元川悦子)

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 日本代表10月シリーズ2戦目だった10日のハイチ戦(横浜)は3-3のドロー。序盤の楽勝ムードから一転、想像だにしない結果に終わった。

 キャプテンマークを巻いた長友佑都(インテル)が「堂々とやってる選手もいれば、オドオドしているというか、怖がってプレーしている選手もいた」と大挙して先発に名を連ねた新戦力に辛い評価をつけ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「長年、監督をしてきてこんなによくない試合は初めて。相手がブラジルだったら10失点しているだろう」と酷評した通り、フレッシュなメンバーのテストは失敗に終わったと言っても過言ではないだろう。

 とりわけ、気になったのが、中盤のバランスの悪さだ。香川真司(ドルトムント)をトップ下に据えて挑んだ6日のニュージーランド戦(豊田)でも、香川が3トップに吸収されてしまい、山口蛍(C大阪)と井手口陽介(G大阪)のダブルボランチとの間が分断される状態に陥ったが、逆三角形の中盤を採用した今回は攻守のバランスがさらに悪かった。

「ウチは最初、ワンボランチでやってたんで、航(遠藤=浦和)の脇がすごく空いていた。1失点目もワンボランチで一番やられてはいけないやり方だった」と最終ラインに陣取った昌子源(鹿島)が前半28分のハイチの1点目のシーンを振り返ったが、「アンカーの脇」という弱点を繰り返し突かれたのは確かだ。

 今年3月の2018年ロシア最終予選・UAE戦(アルアイン)で、長谷部誠(フランクフルト)をアンカーに据え、香川と今野泰幸(G大阪)をインサイドハーフに並べた形で機動力の高いサッカーを実践して以来、指揮官は4-3-3に重きを置くようになった。

 ロシア行きの切符が懸かった1ヶ月前のオーストラリアとの大一番(埼玉)も同システムを採用。長谷部、山口、井手口の3枚が高度なインテンシティーを見せつけ、相手を圧倒。ハリルホジッチ監督も「理想的な戦いができた」と満足感を口にした。

 だが、右ひざ負傷が完全に癒えていない長谷部が離脱した後は思い通りの結果が出ていない。最終予選ラストのサウジアラビア戦(ジェッダ)は山口をアンカーに配置しながら0-1で敗れた。

所属する浦和ではDFを務めている遠藤航

「(サウジ戦では)オーストラリア戦と同じサッカーをやろうとしたけど、もっと違う戦い方をすればよかった」と山口も反省しきりだった。もちろん周りとの関係や戦況によるところもあったが、自らリーダーシップを発揮して周りを動かすことを苦手とする彼の問題点が浮き彫りにされたのも事実だ。

 遠藤を起用した今回は、守備組織が一段と機能せず、3失点を喫した。アンカー1枚に対し、相手インサイドハーフが2枚いたことで数的不利に陥ったのも痛かった。

「前から行くのか、ブロックを敷くのかがあまりハッキリできていないところがあった。僕らの2センターバック(昌子源=鹿島と槙野智章=浦和)に対して相手1トップ(ナゾン)が落ちている状況で、自分も前半はそこを見すぎた。もうちょっと高い位置で守備をしたかったけど、そこのケアを意識しすぎて前との距離が空いてしまった」と遠藤航は悔やむしかなかった。

 1失点目につながったナゾンにかわされたスライディングタックル、3点目のミドルシュートに寄せきれなかった部分含め、日頃、浦和レッズで右サイドバックやセンターバックを主戦場としている感覚が出てしまったようにも見受けられた。

「どこまでサイドにスライドするのか、センターバックが出てきた時のポジショニングをどうするかといった難しさはやっぱりある、運動量的にもきついと感じた」と自身も本音を吐露する通り、ボランチでのプレーを積み上げられない現状はやはり厳しい。

 香川は「航もホント100%出し切っていた。ただ、ワンボランチはあそこにいるだけじゃなくて、もっと前に距離をかけていかないと。彼にも絶対にできるはず」とかばったものの、修正を図っていく場が代表に限られているのは頭が痛い。

 山口にしても、セレッソ大阪ではダブルボランチで起用されていて、「アンカーは慣れてないからやりづらさがある」と言うだけに、まだまだ不安が残る。そこは見逃せない点だ。

 翻って大黒柱の長谷部を見ても、フランクフルトでは昨季からリベロに入るケースが圧倒的に多い。「このポジション(DF)に慣れないようにしないといけない」と本人も話したが、感覚的なズレは皆無ではないようだ。加えて、ヒザの状態がロシアまでに完璧に回復する保証もない。

長谷部不在で4-3-3が機能するのか

 こうした困難を抱えていても、33歳のベテランがいなければ、ハリルジャパンの中盤は成り立たない。本田圭佑(パチューカ)不在の右サイドは久保裕也(ヘント)、浅野拓磨(シュツットガルト)、原口元気(ヘルタ)がしのぎを削り、岡崎慎司(レスター)不在の1トップも大迫勇也(ケルン)中心に人材的に少しずつ厚みを増してきたが、長谷部の穴は簡単には埋まらない。特に4-3-3をやろうとするなら、盤石な彼がいないと難しい。それが今の日本の現実だ。

 このようにアンカーの人材が豊富でないのだから、「そこまで4-3-3に固執する必要があるのか」といった議論が起きてくる可能性も少なからずある。ハリルホジッチ監督は4-3-3、4-2-3-1、4-4-2と相手や戦況、時間帯によって戦い方を変え、メンバーも入れ替えられる幅広いチームを作りたいという理想を掲げているが、8ヶ月後の本大会までに残されたテストの場は5~6試合がせいぜい。時間的余裕は全くない。

 長谷部以外のスーパーボランチが本大会までに出てきてくれればいいが、そこに期待するよりも、現実を見据えてベストな構成を模索する方が成功に近づける。

 実際、2010年南アフリカワールドカップで指揮した岡田武史監督(FC今治代表)もアンカー・阿部勇樹(浦和)の前に長谷部、遠藤保仁(G大阪)を並べる3ボランチ気味のシステムで戦って16強入りを勝ち取っている。結果を出すためには割り切らないといけないこともある。

 ハリルホジッチ監督は11月のブラジル・ベルギー2連戦を前にどんな策を講じるのだろうか。

(取材・文:元川悦子)