「結婚なんてダサイ」が口癖の40歳男が、六本木一丁目の超高級レジデンスで見せた本性

「結婚なんてダサイ」が口癖の40歳男が、六本木一丁目の超高級レジデンスで見せた本性

「うち、くる?」

男の口からその言葉が零れた瞬間、女心は様々な感情で渦巻く。

高揚感、好奇心、そして、警戒心。

大手出版社で編集を務める由貴・29歳。

デート相手は星の数ほど、しかし少々ひねくれたワケありの彼女は、彼らの個性やライフスタイルが如実に表れる部屋を分析しながら、“男”という生き物を学んでいく。

前回は、外資マーケターの高輪の部屋を訪れたが、今回は...?




女は誰でもそうかもしれないが、“年上の男”という生き物の前で、私は警戒心がやや弱まってしまう。

「俺みたいなおじさんから見たら、バツイチの若い女性なんて、一番魅力的な存在だね。結婚なんてダサいもの、由貴ちゃんは捨てて大正解だよ。」

愛宕にある『精進料理 醍醐』の広々とした個室にて、椎名さんは鋭い眼光を向けて言った。取ってつけたようなお世辞だが、素直に嬉しいと思える。

「おじさんの身体には、こういう味が染みるんだよなぁ」

見た目に美しい八寸を口に運び、窓の外の美しいお庭を眺めながら、彼は少々行儀悪く足を崩した。

椎名さんは40歳だが、浅黒く艶のある肌と、異様に引き締まった身体のおかげでかなり若く見える。でも彼は、やたらと自分を“おじさん”呼ばわりするのだ。

「由貴ちゃんみたいな美少女と食事ができるおじさんなんて、俺は幸運だよね」

たぶん、自分なりに“おじさん”という身分が気に入っているのだろう。

だから私は敢えてそこには突っ込まずに、いつも“若い女”らしく振舞うようにしている。

適度に素直に、生意気に。

「私だって、椎名さんみたいな男性とご一緒できるの、楽しいですよ」

実際、29歳でバツイチの自分を美少女扱いしてくれる素敵な年上男に恵まれるなんて、私こそ幸運である。

“おじさん”でいてくれる限り、私はたっぷり彼に甘え、都合よくこの関係を楽しめるから。


港区おじさんの住まう、港区の超高級レジデンスとは...?


普段はエラそうなおじさんの、可愛らしい姿


椎名さんの部屋は、六本木一丁目にあるアークヒルズ仙石山レジデンスにあった。言わずと知れた、森ビルの超高級マンションシリーズである。




この系列のレジデンスは、すべてホテルライク...というかまさに高級ホテルのようだ。

建物のスタイリッシュな高級感やコンシェルジュ、ドアマンなどのサービスは勿論だが、何より魅力的だと思うのは、都内5か所のレジデンスに併設されたヒルズスパの利用権を得られることだろう。

この夏には、椎名さんに連れられて女友達と何度か六本木ヒルズのスパをゲスト利用させてもらったが、限られたアッパー層のみが使用できる優雅な空間の居心地の良さは、何とも言えない快感だった。

その後、私が突然家に遊びに行きたいと申し出たとき、椎名さんはハトが豆鉄砲を食らったような反応をした。

単純に、家賃100万円、広さ100平米を超える一人暮らしのおじさんの部屋に興味があっただけなのだが、付かず離れず食事だけ楽しむ関係に一歩踏み込まれたのに驚いたようだ。

かといって、彼だって下心ゼロで私に接しているとは思えないが。

「じゃあ、近いけどタクシー捕まえようか」

しかし椎名さんは、動揺を瞬時に抑え、実にスマートに車を手配してくれた。私はやっぱり、年上の男のこういうところが、たまらなく好きなのだ。




「白ワインでいいかな?」

彼の部屋は、まるでモデルルームのようにお洒落だった。

センスの良い家具に、絶妙に配置された間接照明、床にはホコリ一つなければ洗面台もピカピカで、ルームフレグランスも程よく香っている。

「それか、ジュース、お茶、コーヒーもありますよ」

家にお邪魔してから、彼は私とあまり目を合わさず、ピリっとした緊張感を放っている。普段はちょっと強気でエラそうな自称おじさんの、少しオドオドした姿というのは可愛い。

「じゃあ、コーヒーをいただいてもいいですか?」

「普通のブラックコーヒーでいいかな?カフェラテもできるし、ディカフェもあるよ」

「カフェラテがいいです」

すると椎名さんは、ミルで豆を挽きはじめ、温めたミルクを泡立て、ものすごく丁寧にカフェラテを淹れてくれた。

そのホスピタリティの高さと静かな気遣いからは、まるで反抗期の娘に接する父親のような臆病さが垣間見える。

そんな彼に胸がキュンとなる女は、私の他にも、きっと沢山いるのだろう。


「結婚をダサい」と豪語するおじさんの本性とは?


自らを“おじさん”と呼ぶ本当の理由


「これからは女性が引っ張っていく世の中になるんだからさ、由貴ちゃんみたいに頭の良い子は、結婚とか出産なんて、ダサいことに囚われる必要なんてないよ」

ひんやりと肌触りの良いシーツも、きっと高級なものに違いない。

緊張から解放されたらしい彼は、ベッドの上で、説教染みた饒舌さを取り戻していた。

―結婚なんて、ダサいー

これは椎名さんの口癖で、だからこそ、20代でバツイチとなった私を“分かっている女”と認定し、やたらと可愛がってくれる。

「そうですね」

しかし当の本人は、2度の離婚を経験し、子どもも2、3人いるというから、やっぱり“自称おじさん”は面白い。

某投資ファンドのパートナーである椎名さんは大金持ちで見た目もハンサムだから、ちょっと外に出れば、女子大生や港区女子、モデルだのグラドルだの、多くの女がウヨウヨ群がる。

そのため過去には幾度となくトラブルに見舞われ、いい加減女には辟易しているらしいが、寂しがり屋で心根の優しい彼は、そんな女たちを恐れながらも、結局拒むことができない。

ちなみに現在の恋人は、33歳の外資系保険会社に勤めるバリバリ系の女で、結婚のプレッシャーは日々強くなっているとのことだ。(今夜はこの話を一切持ち出さないのが、また面白い)

でも私は、きっと椎名さんは彼女の押しに負け、近々結婚するだろうと予想している。彼は優しい男だから。




「また、美味しいもの食べに行こうね」

エントランスには、いつの間にか椎名さんが手配してくれた車が止まっていた。タクシー代を運転手に渡すと、モコモコの部屋着姿の彼は笑顔で私を見送った。

―こんな部屋にわざわざ住んで、カフェラテまで作れて、どこが“おじさん”なんだか...。

何となく拗ねた気分になりながら、しかし私は、彼が“自称おじさん”で良かったとホッと胸を撫で下ろしていた。

“おじさん”だから無邪気に甘えたり我儘を言えるが、彼が現実的に将来を考えられる年齢だったら、きっと何だかんだで恋に落ちてしまう気がした。

恋してしまったら、焦げつくような嫉妬や身を切られるような悲しみをたっぷりと味わされるだろう。でも憎むこともできず、悶々とした思いを長らく抱えることになるのを容易に想像できて、背筋がゾッとする。

嫉妬深くて我儘な私は、自分が大好きで、誰にでも優しい思わせぶりな彼の隣で微笑んでいられるような器の大きさは持ち合わせていないからだ。

東京の酸いも甘いもすべて味わい尽くし、もうギラギラ感なんて一切ありませんよ、みたいな顔をしながら、港区のど真ん中の超高級マンションの隙なく整った部屋に住む40歳男。

几帳面で人を遠ざけるような振る舞いをしていても、彼はまだ、一線を退く気なんて微塵もないのだろう。

きっと自らを“おじさん”と呼ぶことで、椎名さんはそんな欲望の牙を隠しているのだ。

人は選ぶ物件によって、自分でも気づかぬ本音を他人に見抜かれてしまうのかもしれない。

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